学校日記

ひとり言

公開日
2024/08/20
更新日
2024/08/20

校長室より

☆こんな素敵な話に出逢いました!☆

『ゴール裏の青春』 〜機会があったら、高学年の児童に!〜

 息子が所属するサッカー部が埼玉県の代表になって、全校中学校大会に出場することになりました。どちらかと言うと、これまで私はサッカーにそんなに関心をもっていませんでした。
 その私でも町内あちらこちらに貼られている『祝・全国大会出場、M中サッカー部』というポスターを見ていて、まんざらでもありませんでした。

『今度、全国大会に出場だってな。すごいじゃないか。』私は息子に声をかけました。『うん。』と、息子はちょっとにっこりしただけでした。私はもっと弾んだ声で息子がいろいろ話してくれると思っていたものですから、拍子抜けしました。こちらから話すことがなくて『ところで、おまえはどこのポジションなんだ。』と通りいっぺんのことを言いました。
 すると、息子は『おれ、球拾いさ。』とさらりと言うのです。息子がどこかのポジションで練習をしているものと勝手に思い込んでいた私はがっかりで、つい、『何だ。プレーしていると思っていたよ。毎日遅くまで練習していると思っていたのにそうなのか。3年生にもなって、球拾いなんかだったら、高い金かけて全国大会なんか行く必要ないじゃないか。』『受験があるんだぞ、勉強に切りかえたらどうだ。』そんな息子の気持ちを逆なでするようなことが口から出てしまいました。

 息子は小さく『関係ねえよ。』と、吐き出すように言うと、こわばった顔で2階へ行ってしまいました。(ばかなこと、言ってしまった。)私はすぐそう思ったのですが、(しかし、選手でもないのに毎日朝練、遅練で肝心の勉強が遅れている。こいつはやっぱり気になるな。)という本音もありました。(息子がかっとなっても、しかたがない。次に冷静になってみれば、自分のやっていることが損なこともわかってくるだろう。)と、そんな気持ちももっていました。

 数日して電話台のわきに『サッカー通信81号』が置いてあるのに気付きました。サッカー通信は毎週、サッカー部員の家庭に送られる通信です。その通信を見てはっとしました。息子の名前が目に入ってきたからです。『背番号12』という息子の書いた作文が載っていたのです。

『俺は背番号12。』レギュラーではない。この間『おまえはどこのポジションをやっているのか。』と父に言われた。おれは正直、どきんとした。父はサッカーのことなど、関心がないと思っていた。おれはとっさに『球拾いだ!』と言ってしまった。その時のおれの気持ちなど、誰もわからないだろう。おれ自身だって、なぜそんなつっけんどんな言い方をしたのか、わからない。かっこ悪い、てれくさい、それを隠そうと思っている自分が自分でもしゃくにさわって『おれは球拾いだ。』なんてつっぱって言ったのだろう。父は『それならサッカー部を引退して受験勉強に切りかえたらどうだ。』と言った。おれは一瞬、考えてしまった。言い訳も考えようとした。おれだって、何回やめようと思ったか知れない。少年団のころ、一緒にプレーした仲間は、大部分レギュラーになっている。寂しい日だってあったさ。父の『受験に切りかえろ。』という言葉がひっかかって全国大会出場がかえって、嫌になった。それから毎日、明るい気分になれなかった。

 でも、今は違う。どこのチームにも12番がいるからだ。12番は12番の役割があるからこそ、監督が12番を認めてくれているのだ。おれはそう思った。

 おれは、いつでも出場できるように準備をしている。体調を整え、馬力をたくわえておくため、残された夏の日々を練習で埋めていきたい。水くみでもタオル出しでもイレブンのためにやるつもりだ。12番はおれの中学校時代の勲章なのだ。電話台の前に突っ立ったまま、息子の作文を読んでいて、その文字がかすんで揺れるのをどうしようもありませんでした。息子はサッカーによって、人間勉強をしているのです。

※純粋によい話だと思いました。感動しました!